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11/20 クドカン版『ロミオとジュリエット』(雑感 : 超「現代的」な主人公解釈)

クドカン版『ロミオとジュリエット』を見に行きました。下北沢の本多劇場はかつてラーメンズが愛用していた箱ということで勝手に聖地巡礼のような気持ちで入場。U25チケットを引き換えたらまさかの最前列でびっくり。これまでこの手のチケットでは二階席or近いけど凄い見にくい席ばかり当たってきた身なので騙されてるんじゃないかと思いながら着席する。一番端ではあったけど目の前で俳優さんの表情が見れて凄く良い経験をさせてもらいました。

 

 

 

 

では、観劇の感想になります。

 

 

 

 

観終わって色々考えて、今はこれこそが真に現代的なロミジュリ解釈なんじゃないかと思っています。

といっても、おそらく観劇した人には「現代的」と言われると首をかしげると思われます。登場人物は皆、当時の俳優と同じような「エリザベス朝の衣装」を身に纏って演じます。身分の高い役柄の人はそれ相応のかつらを被っていたりもします。そうした点では「現代的」とは言えないかもしれません。

 

ただ、私が興味を持ったのは主人公たちの振る舞いにあります。

主人公の三宅ロミオ。三宅さんのお年を考えると「ロミオ役?そのお父さん役じゃなくて?」と言いたくもなります。にもかかわらず、舞台の上のロミオはとても若く見えました。

いや、正確に言うととても「幼く」見えました。

ジュリエットも同様です。バルコニーシーンの二人の戯れはどう見ても少年と少女のようにしか見えませんでした。そんな二人がシェイクスピア特有のくどくどとした台詞を喋る、正直言って妙な違和感は拭い去れませんでした。

 

 

でも考えてみてください。そもそもシェイクスピアが設定した彼らの年齢はロミオが16、ジュリエットは13です。そのくらいの歳の子どもだと考えると、クドカン版のロミオとジュリエットの幼さはあながち間違いとは言えないのです。そこまで考えて、そうかと合点がいきました。この舞台の二人は、「現代の青少年」なのです。だから、どこか不恰好なのです。

 

 

今の若者と昔の若者とでは、彼らの育つ社会の状況が全く異なっています。シェイクスピア存命当時のイギリスでは(劇中でパリスが仰っているように)10代で結婚、妊娠もざらにありました。そもそも平均寿命も今とは比べものにならないほど若く、その分若者が大人になるのも今よりずっと早かったと思われます。

 

 

しかし1613と言われれば今の日本では高校生と中学生です。もちろん、その実態はシェイクスピアの生きた時代における認識とはかなり異なっています。舞台の上でロミオは「引きこもり」と揶揄され、何かにつけてうじうじと弱音を吐き、友人や神父には泣きつき、時には駄々をこねるような仕草も見せます。他にもお弁当と水筒を持ってキャピレット家の舞踏会へ参上するなど、行動の幼さがことさらに強調されているような印象を受けました(三宅さんを「若く、より若く」見せるための演出なのかもしれませんが、少々やりすぎな気もします笑) しかし考えてみれば今の日本の高校生そして中学生で、テキスト上のロミオ、ジュリエットのような振る舞いができる人がいるでしょうか?前半(二人の結婚まで)の喜劇パートのロミオの軽薄さ、そして恋の情熱に焦がれる様は微笑ましいくらい若々しいですが、それでも現代の認識で見るとせいぜい18, 19くらいかなぁという感じですし、後半のロミオの雰囲気はハムレット(公式年齢30歳)的風格すら感じます。対するジュリエットは年上のロミオより更に大人びています。最後一人で決断して事を起こす凛とした姿には少女の面影を感じさせません。

 

 

そう、だから現代に『ロミオとジュリエット』を「年齢通り」演出することは無理があるのです。なぜなら現代の目で見ると、テキスト上のキャラクターの精神年齢は数字よりずっとずっと上に見えるから。パンフレットでジュリエット役の人が「何故ジュリエットがロミオに惹かれたのか分からない」と言っていましたが、実際今の日本で1613の少年少女がああいう形で出会ってもきっと惹かれることはないと思います。それは文化や社会的背景の違いなどさまざまな要因がありますが、とにかく仮にこの作品の舞台設定が現代の日本であった場合、この二人はおそらく出会わなかっただろうし悲劇が起きることもなかっただろうと思われます。

 

 

そう考えると、『ロミオとジュリエット』においてなにかと高名な俳優や大御所など「テキストで明示される年齢とはかけ離れた俳優」が二人を演じる問題も仕方ないのかなという気がします。現代におけるロミジュリは演じる俳優にある程度の年齢がないとリアリティが希薄になってしまう。それだけ彼ら二人の精神的成熟度が現代の同年代とは異なっているということですね。

 

 

しかしそう考えると改めて齢50にして「16の未成熟な青少年」を演じた三宅さんやばいな。あのロミオは未成熟すぎてかわいかったけど、あれは青年というより少年だよな~。