クイーンのJohn Deacon作品全曲レビュー
本日8月19日は我らの愛するクイーンのベーシスト、ジョン・ディーコン氏の67回目の誕生日!ということで今年も真夏のディーコン祭りと称しましてディーコンさんについて特集してみたいと思います。 去年はクイーンのPVをディーコンファン目線でお届けしましたが、今年はディーコンさん作曲作品(フレディとの共作を含む)をディーコンファンによるバイアスがかかった状態で年代順に全曲レビューしてみました!曲名のかわりにYouTubeの動画を貼っておきたので気になったらその場でチェックだ!あともしかしたら漏れがあるかもしれないのでその時は教えてください。
なお本レビューは筆者の独断と偏見に基づきます。苦情は承っておりませんので悪しからず。
1974 『シアー・ハート・アタック(Sheer Heart Attack)』
Queen - Misfire (Official Lyric Video) - YouTube
ポップすぎて若干?浮いてるデビュー曲(雰囲気的に次曲のリロイブラウンに助けられてる感はある)。別にクイーン2の後半みたいなメドレー曲の一種ってわけでもないのに曲の長さは二分にも満たないという…これが当時の限界だったのか??
ベースラインは後期曲にも通じるパターン化されたキャッチーなもの。明るい曲調で歌ってることはエロってのが失笑ものだけどそんなあんま考えずに歌詞考えてる感が大好きです!!!
1975 『オペラ座の夜(A Night At The Opera)』
Queen - You're My Best Friend (Official Video) - YouTube
ディーコンさんの出世作。奥さんを親友と称するディーコンさんのあたたかい感性に思わず微笑みたくなる一曲。これも例に漏れずポップ、そして三分にも満たない曲なんだけど今やクイーンの代表曲のひとつと言って過言ではないよね。子供向け映画の挿入歌として使われてた他、USJのスヌーピーコーナーでも使われてて、「友達」についての歌ってのが功を奏してるなと思った記憶が。
エレピが印象的で、曲のやさしくて明るい雰囲気と合致しているね。ベースもフレディの歌と呼応する名演奏。特定のパターンもありながら遊び要素もあってこれが弾くとめちゃくちゃ楽しいんですよ!(経験談)(前にクイーン曲をコピーしたときはこればかり練習していた)
1976 『華麗なるレース(A Day At The Races)』
Queen - You and I - (Official Lyric Video) - YouTube
ベースがめちゃくちゃ印象的なミリオネアワルツの後、当のベーシストが作る曲はこれです。ズコーッてなりますよね。いや私はディーコンさんのつくるポップソング大好きですけど!(弁解)
マイベストフレンド系列の曲と言って良いでしょう。奥さんへの愛を歌ったかわいい曲。フレディの甘い歌い方が漂うお花畑感…もとい多幸感を促進してますね。華やかなコーラス、ギターソロ、どれをとってもいちいちポップでまさにディーコン曲って感じ。それにしても前の曲とのギャップすごいな!!!
ベースも印象的フレーズもありつつまったく邪魔しない…というかあまり目立たな(略
1977 『世界に捧ぐ(News Of The World)』
Queen - Spread Your Wings (Official Video) - YouTube
冒頭の二曲、ロッキューと伝説のチャンピオンばかりが注目されがちな『世界に捧ぐ』。そんな中、地味ながらファンの間で人気の高い曲といえばこちら。これまでポップソングばかり作ってきたディーコンさんですがここにきて作曲の幅を見せてきましたね。こういうバラードも作れるんだぞと。歌詞もラブソングしか書けないわけじゃないんだぞ、というディーコンさんの気合いが伝わってくるようです。ちなみにこの曲、クイーン曲の中で初めて(!!)コーラスが一つも入ってない曲とのこと。そうした意味でも挑戦的な曲だったわけですね。曲のメッセージがフレディの唯一無二な歌声に支えられて力強く響き、この試みが大成功であったことを伝えています。
途中までピアノとベースで、二番からギターとドラムが入ってくる構成も素晴らしいね。ライブではちょっと様相を変えるけど、こっちはこっちでアウトロが最高なんだ、また。
Queen - Who Needs You (Official Lyric Video) - YouTube
こうして聴くと『世界に捧ぐ』のディーコンさんは色々と実験的に試していたことが分かりますね。こんなカフェで流れてそうなポップなアコースティック曲、これまでだと有り得ないですよ。パーカッションもなんかポコポコいってるしマラカスだし…。
しかしかわいいメロディながらその歌詞は結構辛辣で笑えます。色んなサイトで「辛辣だけど深刻さがない」的なこと書かれてましたけど、こういう時折見せるアンバランスさがディーコン曲の(そしておそらくディーコンさん自身の)魅力の一つなんじゃないかと思いますね。ええ、盲目です。
1978 『ジャズ(Jazz)』
Queen - If You Can't Beat Them (Official Lyric Video) - YouTube
アメリカンなパワーポップというか、ポップなロックって感じですね。ジャーニーとかそこらへんが歌ってても違和感なさそうな。
構成にあまり工夫が見られな…(げふんげふん)なのでともすれば一本調子な印象を与えるかもしれないです。とはいえこんなご機嫌な旋律に恨みつらみが滲み出たような歌詞をのせてくるところは流石です(何が?)。
Queen - In Only Seven Days (Official Lyric Video) - YouTube
Jazzのディーコン曲ってなんとなく印象が薄いんですけど、考えてみたら『世界に捧ぐ』と『ザ・ゲーム』に挟まれてちゃ仕方ない気もしますね。しかしこの曲、ちゃんと聴くと旋律は美しいし初期クイーンらしいハーモニックなギターやピアノなど華やか要素も盛りだくさんで地味ながら良くできた一曲です。フレディの歌い方が全体的に漂う切なさみたいなものを上手く表現してる気がします。意外にもコーラスのない曲なんですね、ギターがその役割を果たしてる気もするけどこの曲にはあっても良かった気が。まあ歌詞の内容はワンナイトラブ的なアレなんだけどな!!!!!!ほんと文豪とか詩人はこういうことでもロマンチックに脚色しやがるから困るぜ…。
1980 『ザ・ゲーム(The Game)』
Queen - Another One Bites the Dust (Official Video) - YouTube
先日YouTubeで見た「ジョン・ディーコンの印象的なベースフレーズランキング」ではこの曲が一位でした。まあ異論はあるでしょうが確かにこの曲のフレーズは耳に残る。イントロクイズでも最初の三音でみんな正解できるんじゃないかと思うくらい。構成のかっこよさというのもあるんですが、この曲が最もフィーチャーしているのはフレディの声、そのものです。考えてみるとクイーンの財産としてのフレディの声に一番依存していたのはやはりディーコン曲なのではないかと思いますね。そりゃフレディ死んだら引退せざるを得ないわ、というか…。
しかしバックチャットも然りですが、おそらくディーコンさんは排除したかったであろう「ギター」、めちゃくちゃハマってます。本当はゴリゴリのロックが好きなのにこういう形のプレイもできるブライアンは凄い。
Queen - Need Your Loving Tonight (Official Lyric Video) - YouTube
いや『地獄へ道づれ』の直後に「ヘーイ!」って…。緊張感の差がすごい。いつものラブソング、いつものポップ調ロック、この安定感。ジャズの『うちひしがれて』よりの曲だけどブリッジのOoh I need your lovingのコーラスが最高なので個人的にはこの曲の方が好きです。こんな贅沢なコーラスの使い方ある??これが歌わない人間によるコーラスの無駄遣いである。
1982 『ホット・スペース(Hot Space)』
Queen - Back Chat (Official Video) - YouTube
ディーコンさん流『アイ・ミー・マイン』(だと思っている)誰のこと言ってるんでしょうね…まあこういう恨みつらみを曲にするなんてことは珍しくはないから…(ジャズの『うちひしがれて』しかり)。
ファンクに傾倒しすぎてギターを疎んじた結果ブライアンとの仲がギクシャクしたなんて話ありますけど、この曲は『地獄へ道づれ』と比べるとギターがかなり前面に出た曲、というかベースよりもギターのが全然印象に残りますし凄く良い役どころを貰ってるとすら思います。乾いた音色が超かっこいい。ギターソロも。これ、双方の食い違う意見を折半した結果良い方向に出たというグループワークの賜物の至極の一曲だと思うんですがね、ウケは良くなかったんだなこれが…。こんなかっこいいのに、世の中上手くいかないね。それとも『地獄へ道づれ』がうまくいきすぎたのか。
Queen - Cool Cat (Official Lyric Video) - YouTube
フレディとの共作。FMラジオでかかってそうな…すごくお洒落で素敵な曲で何気に好きな一曲です。クイーン色は無いと言っても過言ではないけれども!フレディに全部フォルセットで歌わせるなんて、信頼関係がなきゃ出来ないですよ。しかしディーコンさんどんなふうに頼んだのやら…意外に大胆なところがあるのね…。
ギターのカッティングやエレピが効果的にFM感を演出してる他、ベースもむやみに動かずに雰囲気づくりに徹していてディーコンさんのこだわりを感じます。
Queen - I Want To Break Free (Official Video) - YouTube
PVになると急にシンセサイザーが幅を利かせだす曲ですが私はシンプルなアルバム版の方が好きです。It's strange〜になってからギュイーンとギター、およびシンセが入ってくるからこそ盛り上がるんだし、最初からシンセ入れるのはな〜と私は思うんですけどね。あとPV版のギターソロの後の謎のシンセソロ何!?あれいる!?!?そもそも私、シンセあんま好きじゃないんだよね!!(根本的問題)ただあれがあるおかげでアルバム版よりもBut life still goes on以後の静けさと歌詞がより効いてくるな、とは思います。
曲自体はほんとに好きです。歌詞もBreak freeなんて大きなこと言いながら結局は「それでも日常は続く」と、Breakしきれないジレンマみたいなのが表現されていて、これは全ての大人のための哀歌なんじゃないかなと。でもこのBreak Freeというメッセージが南米では圧政に対抗するアンセムとして掲げられたんですよね。作品が本人の意図を超えたとき、その時こそそれは名作になり得るんだと思いますよ、ディーコンさん。
1986 『カインド・オブ・マジック(A Kind Of Magic)』
Queen - One Year Of Love (Official Lyric Video) - YouTube
こてこてのラブバラード。フレディの歌が泣かせにきますね。時代的に考えたらふつうに世間ウケしそうな曲な気がする。元々映画のサントラとして作られた曲とのことですが、だからこそギターじゃなくサクソフォーンのソロなんてことできたんだろうな。
Queen - Pain Is So Close To Pleasure (Official Lyric Video) - YouTube
フレディのフォルセット曲第二弾。フレディとの共作。クールキャットにシンセをフィーチャーさせた版って感じ。この曲もOne Year of Loveもすごく「時流に沿った」曲という感じがします。新しいもの好きで早いうちから色んなことを試してきたディーコンさん、ともすれば敏腕プロデューサーにもなれたんじゃないかと思うけどホットスペースの失敗や自身のソロプロジェクトがコケちゃったことで自信を失ってしまったんだろうか…。まあ本人の性格的にもあまり派手なことしなさそうだしな。それでもファンとしては、今もしディーコンさんがクイーンで活動してたらどんな曲を作っていたかすごく気になります。
Queen - Friends Will Be Friends (Official Video) - YouTube
ディーコンとフレディの共作。王道をゆく「らしい」ロックナンバー。歌謡曲みたいだと言われることもあるけど、こういう曲を演奏してそれなりに魅せるって凄く難しいんですよ…(経験談その2)。クイーンというモンスターバンドだからこそ演奏できる曲であり、様になる曲なんだと思います。ベースは時折メロディアスに動く場面もあり。ブライアンのギターにシンセ、ちょっと大仰だけど曲調にしっくりきてますよね。
この曲はPVの終わり方が最高に良いので見てください。ディーコンさんも楽しそうで泣ける。ファンの前で楽しそうに演奏する彼らの姿に画面が滲みます。
1989 『ザ・ミラクル(The Miracle)』
Queen - The Miracle (Official Video) - YouTube
フレディとの共作とのこと。特筆したいのはまずベース!かなり気合入ってます。よく動くしよく聴こえる!!こういうベースプレイを長らく聞いてなかった気さえしますよ!?やれば出来るじゃないか!!(誰目線)このアルバムからクイーン名義で曲を発表することになったからか、それともフレディの病気のことを知ったからか、凄くレベルの高い作品だと思います。シンセは抑制が効いてて効果的。曲の構成も一筋縄でいかない感じが初期クイーンを彷彿とさせます。これまでの経験がよく活きているんじゃないかと。
と、このように筆者大絶賛の『ミラクル』ですが、PV版はショートバージョンなので気になった方はアルバムを借りて是非聴いてくれよな!!!!(ダイレクトマーケティング)
Queen - Rain Must Fall - (Official Lyric Video) - YouTube
一聴した瞬間からディーコン曲と分かるアレ。歌詞はフレディとのうわさですが、曲作りのイニシアチブはディーコンさんが握っていたとみて間違いない…はず!
印象的パターンを繰り返すベースライン、これにシンセやギターがうまくのってとってもご機嫌なナンバーに仕上がってます。歌詞も明るい曲調に負けない前向きさ。これはさてはディーコンさん歌詞書いてないな!?←アンバランスさを求めるな。
これもそうだけどミラクルは完成度の高い楽曲が多い割にマイナーな気がして寂しい。良い曲いっぱいあるのになー…。
Queen - My Baby Does Me - (Official Lyric Video) - YouTube
「ジョンがベースラインを持ってきたんだよ〜」的なことをフレディが言ってそれに対してディーコンさんが「いや君じゃない?」ととぼけてたのでおそらく共作ですね。てか曲聞けば分かると思いますけど完全にホットスペース臭漂ってるのでお察しです。この曲もベースとギター、そしてボーカルがかっきり噛み合ってスタイリッシュに仕上がってますね。バックチャット的でもちろん筆者の好みにどストライク。うん、かっこいい!
1995 『メイド・イン・ヘヴン(Made In Heaven)』
Queen - O (My Life Has Been Saved) - YouTube
スタッフインタビューなどでディーコンさん作曲と明言されている曲。どちらかといえば心の絆的な雰囲気の曲だと思います。曲の雰囲気もよく似ている。シンセとギターの荘厳さとか。どうでもいいですがMother Loveの後のこの曲、かなりほっとします。心の絆もそうですけど、こういう「らしい」曲ってちょっと食傷気味になりながらもある意味ではみんなが望んでるものだったりするんですよね。今回のアルバム構成はこの曲の持つそうした部分が上手く機能したのでは。歌詞は前向きで、そういう意味でも安心感があります。
こうしてレビューしてみると改めてディーコン氏の特異性というか、不思議さというか、掴み所のなさが垣間見えてますます好きになっちゃいますね。皆さんはお気に入りの曲を見つけられたかな?この夏はみんなでディーコンさんを聞こう!(雑なまとめ)