As I Like It

「好きなことを好きなだけ」をモットーに好きなものについて好き勝手書くブログ。

2.3札幌 私の愛したヒール(または私は如何にしてプロレスにハマり鈴木軍を愛するようになったか)

※プロレスを好きになって一ヶ月、そして鈴木軍のファンになって一週間というハマりたてどニワカが見た2.3札幌の感想、およびプロレスと鈴木軍を好きになった経緯を書いたものです。プロレスファンの方はどうか、どニワカが自分の気持ちの整理のために書いたものだから、と生温い目で見ていただけると幸いです。
※なにぶんハマりたてて知識も乏しい状態で書いているので、あれこここうじゃなかったっけ?とかいやいやこれは違うでしょ、とかありましたら遠慮なくご指摘ください。有難がって喜びます。
※ご多分に漏れず無駄に長いです。






突然ですがつい一ヶ月ほど前からプロレスにハマりました。




すべてはいつも愛読しているお笑い番組感想ブログで『有田と週刊プロレスと』が紹介されていたことから始まった。
そのブログで『有プロ』が太鼓判を押されていたので興味を持って見てみたところ、案の定その面白さにぐいぐいと引き込まれてしまった。初めは有田さんの軽妙な語り口と二次利用で画質の荒い写真の数々だけでも十分満足していたのだが、だんだんと「実際の映像も見たい」という気持ちがむくむく湧いてきて、途中からは一話見終えるごとにYouTubeで当時の動画を検索していた。
番組を見始めたのは昨年の師走の暮れ、そこからなんとかおおよその回を視聴し、今年初めの桜庭選手の回だけは配信直後に視聴することができた。そしてその頃にはすっかりプロレスそのものに心奪われていた。


有プロで大きく語られるのは試合内容の詳細、試合結果ではなくその裏にあるレスラーたちの人間ドラマ、彼らの生き様だ。
この人が何故このような行動を取ったか、何故こんなことを言ったのか、その背景にあるドラマが垣間見えた時、人はその人物に愛着を持たざるを得なくなる。
有田さんの語り口からは、氏がレスラーたちのそうした紆余曲折を見届けた上で、だからこそ彼らを愛してやまないことがはっきりと伝わってきた。有田さんのプロレスそしてレスラーたちへの熱い思いが伝染して、私もこうしてプロレスを好きになった。



そうして年明けからはYouTubeでプロレス動画を漁る日々が始まった。
有田さんが番組で紹介していた試合の動画はもちろん、再生回数の多そうな試合やマイクパフォーマンスの動画などもいくつか拝見した。有田さんが「やっちゃダメ」と語っていた全日本の四天王プロレスは最初こそ怖さを感じたものの徐々に面白さが勝っていき、そして気づけば結果など度外視でひたすら熱狂していた。と同時に、当時のお客さんが”麻痺していった”感覚を身に染みて体感し、そんな自分に恐怖したりもした。


動画視聴の他、幕張で行われていた新日本プロレスの興行にもお邪魔した。
ちょうどメキシコのプロレス団体CMLLとの共同興業ロードの最中で、一度に二つの団体が観れて初心者としてはとてもお得な気持ちになった。メキシコの選手達の華麗な飛び技に目を見張り心ときめかせ、また大技が出たら素直に「おおっ」と喜んだり好きな選手を大っぴらに応援したりと自由で開放的な現地の雰囲気をすっかり気に入ってしまった。
こうして、現地観戦をしたことでプロレスへの熱はますます高まることとなった。



その後、これはつい一週間ほど前の出来事である。最初に現地観戦したのが良かったのかまず新日本プロレス内に目出度く推しが誕生した。鈴木みのる、そして鈴木軍だ。


きっかけはたまたま見つけた動画クリップと、埼玉で行われた新日本プロレスの興行だ。
私が見つけたクリップは、ザックセイバーJrと鈴木みのるが対戦している試合の切り抜きだった。鈴木みのるは有プロでも何度か名前を聞いていたので少しは知っていた。80年代から今までずっと第一線で活躍し続けるベテランレスラー。相対するザックセイバーJrはパッと見て、若く顔の整った外国人レスラーというぼんやりとした印象を抱いた。
そんなほとんど予備知識もない状態で何気なく動画を再生した。そして衝撃を受けた。何に?鈴木みのるにだ。

鈴木みのるがつい最近もオカダカズチカ選手とベルトを賭けてメインで戦ったというのは有プロを見て知っていた。しかしその回に関しては長州力襲撃事件の印象が強すぎて、この二人の対決についてはすっかり検索するのを忘れていた。だから鈴木みのるのことはきっと良い選手なんだろうな、と思いつつもまだまだよく知らずにいた。だが、この二人の戦いを見てプロレスど素人の私もようやく「この鈴木みのるという選手は本当に、本当に良い選手なんだな」とはっきり実感した。

両者の関節技の掛け合い、読み合い、ほんの数分程度のクリップだったがその間終始圧倒していたのは鈴木みのるのように見えた。場数の違いか、熟練の技か、その両方か。このクリップの最後に見せた鈴木みのるの余裕の指差しに、私のハートは一発で打ち抜かれた。

すぐにこの対決について調べてみたところ、これはどうやらタッグリーグ戦で起きた対戦で、最終的にはザックセイバーJrが鈴木みのる以外の誰かから3カウントを奪ったとのことだった。そしてザックセイバーJrが実は鈴木みのるが長である『鈴木軍』のメンバーであり、関節技を極めたサブミッションマスターという異名を持つことを知った。ついでに彼が3カウントを取った相手は有プロでもちらりと触れられていた、村上和成選手をスリーパーホールドで病院送りにさせた飯塚高史ということ、そして彼が今年の二月を持って引退することも改めて知ることになった。


そんな二人の攻防を見た次の日の埼玉の興行。私は俄然鈴木軍に興味を持った状態で観戦することになった。

相手は今飛ぶ鳥を落とす勢いのロスインゴベルナブレスデハポン。そのリーダーである内藤選手は、私がプロレスファンでない時でさえその名前を知っていた有名人だ(東スポ食い逃げ記事のまとめツイートで)。
先に登場した鈴木軍よりもロスインゴ組の方が声援が多い気もしたが、しかし一階席には鈴木軍の軍団旗を掲げるお客さんの姿もあり根強い人気を感じた。試合は初っ端から場外乱闘という荒れ模様だったが、私はといえば試合中鈴木みのるとザックセイバーJrが二人してSANADA選手に関節技を決めている姿にこの日一番の興奮を覚えた。そして結果として、試合が終わる頃には無心で「鈴木軍一バーン」とぶつぶつ呟く近寄り難い人間と化していた。
こうして、私は札幌二連戦の一週間前に晴れて鈴木軍の新規ファンとなった。


ファンになってからはまず初めに鈴木軍について検索して情報を集め、動画を探した。
なるほど、鈴木軍がいわゆる悪役、ヒールレスラーの集団であることは知っていたが、その歴史もなかなか興味深い。
一時期は新日本だけでなくNOAHに活躍の場を移していたこともあり、その頃の動画では鈴木軍の勝利後リングに大量のゴミが投げつけられるという前代未聞の光景が広がっていた。まるで往年のプロレスか、いやしかしこれはつい最近の出来事だ。そしてそんな異様な状況でもしっかりと憎たらしくヒールとしてマイクを行う鈴木みのるを見て、はっきりと分かったことがあった。

そう、鈴木軍は紛うことなき「悪党」、ヒールに徹している。だからエンタメの枠を超え、ここまで観客を本気で怒らせることができるのか。

誰かを本気にさせ、そのヒールとしての暗い影でもって相手に眩いばかりの光を当てる。その徹底した悪役ぶりに感嘆し、私の鈴木軍への「好き」の燃料はどんどん給油されてゆくばかりだった。


そうなると俄然、札幌大会に向けて行われていたロスインゴベルナブレスデハポンとの抗争も興味深く見るようになった。ここで一躍脚光を浴びていたのが鈴木軍の二番手という立ち位置にいるタイチだ。

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YouTubeに上がっている鈴木軍の試合動画を見る限り、戦法は小狡くあくまで卑怯に、反則なども駆使しながら戦っていく選手。そんな姑息なファイトスタイルでありながら、現地観戦した埼玉での試合ではかなり良い役どころを担っているようにも見えた。そこで検索してみると、なんと彼の師匠に当たる人物は実は四天王プロレスで名を馳せた川田利明だということが分かった。

えっ!と意外性に驚いて更に調べてみると、どうもタイチはヘビー級転向後頻繁に川田利明の技をかけており、またフィニッシュホールドのブラックメフィストは川田の海外遠征時のリングネームから取っていた。なんだそれは凄くアツい話じゃないか!四天王プロレスの動画を見て興奮していた身としてはこの師弟の繋がりに大いに感銘を受けてしまい、俄然タイチも応援するようになった。



そうして鈴木軍への大好きがしんしんと降り積もった状態で迎えた雪の札幌決戦2月3日。私はその前日新日本プロレスワールドに新規加入していた。鈴木軍の勇姿をこの目で見たいという気持ちをどうしても抑えることが出来なかったのだ。当日は喫茶店を梯子しコーヒー代に財布を圧迫されつつなんとか最初から最後まで一通り観賞した。


プロレスファンならもうご存知だろうが、結果は鈴木軍の全敗。ロスインゴベルナブレスデハポンが鈴木軍を一掃する形になった。


試合の後、私は交通機関も使わずに歩いて家に帰り、そこで静かに泣いた。鈴木軍が負けて悔しい、悲しい、そういう気持ちもある。でも、それだけじゃない。もやもやと心の中で渦巻く何かがあった。それが何か分からない、すぐには言葉に出来ない。でも、悔しさや悲しさを超えたもっと違う何か。


そこで思い出した、有プロを見たときに感じたもの。あの時、番組を通して私はプロレスの何に心を惹かれたのか。それはレスラーたち一人一人の人間ドラマ、その生き様。



極寒の札幌、あの地で鈴木軍は彼らの生き様を見せてくれた。



メイン前に行われた二つの直接対決はどちらも素晴らしかった。

Jrタッグ挑戦試合、いぶし銀金丸義信が見せた試合巧者ぶり。鷹木選手とのやり合いは時が経つのも忘れて見入った。
また鈴木みのるとザックセイバーJrの二人が徹底して関節技で攻め込んでいる姿に自然と胸が熱くなった。タイトルをかけた戦いで二組とも敗北を喫してしまったが、そのリングでの戦いぶりを見ていると握る拳にも力が入った。



でも私がそれ以上に胸を打たれたのは、メインのタイチと飯塚高史に対してである。

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地元北海道でメインイベントを任されたタイチ。あの試合はたとえ負けたとしても、本人が事前に言ったように正々堂々と戦っていれば、彼はヒーローにもなり得た。勝てば金星、負けても「よくやった」と、そう讃えられても全くおかしくはなかった。

けれどもタイチはそうはしなかった。彼が選んだのはあの場において絶対的ヒールとしての立ち位置に君臨することだった。

タイチの影によって、内藤選手は札幌の地で”ベビー”となる。そしてそれはいつまでも変わらぬ「悪党」であり続ける、鈴木軍としての矜持をまざまざと見せつけていた。


そしてそんな、札幌の地のヒーロー、ベビーとなった内藤選手を光らせたもう一人の立役者が、タイチと同じ北海道出身の飯塚高史

自身最後の北海道決戦で飯塚高史は最悪の、いやヒールとして最高の手柄を立てた。それは飯塚高史自身の今の自分の生きる道への肯定でもあり、そのヒールとしての十年もの日々をはっきり”生き様”として私たちに伝えた瞬間でもあった。


だから私は、花道で内藤選手を密かに付け狙う飯塚高史とそれをニヤニヤと見つめるタイチの姿がカメラに映された時、「ああ、そうか…」と、どうにも涙が溢れて仕方なかった。
あの瞬間、勝負より何より彼らの生き様が、二人の生まれ故郷である北海道のリングにくっきりと浮かび上がっていた。

あの時、本来なら歓声を受けてもいいはずの地元のリングで、会場にいる殆どの観客に「帰れ」と大声で連呼されるタイチを見た時、私は喫茶店で涙を堪えながら心の中で「卑怯だぞ、聖帝タイチ」と呟いた。
あの場で内藤選手が真のヒーロー、ベビーとしてリングに立ったように、あのリングでのタイチは正にみんなの嫌われ者、文句のつけようのないれっきとしたヒールそのものだった。



ファンになってまだたった一週間、まさかこんなに心かき乱されることになるなど思ってもみなかった。



けれども私の涙はまだ枯れていなかった。東スポを通じて師匠川田利明の店に行き、また全日本のレジェンドジャンボ鶴田の名を口にしたりとここ最近のタイチは自分のルーツを匂わせるような行動が目立った。その伏線をこの日タイチはリング上で回収した。
大舞台で繰り出した渾身のストレッチプラムだ。


プロレスは技に物語を込める、ファンブログなどでよくそんな話を目にしていた。
私が見たザックとみのるのクリップ、この試合でも実は飯塚高史がザックにあの伝説的スリーパーホールドを決めていた。Wikiによるところヒールになってから殆ど使っていなかったらしい、選手一人を入院させるほどの威力をもつ彼の代名詞とも言える技。それを鈴木軍タッグ対決でしてみせたことにグッときた人も多かったようだ。
また、技ではないが1.4東京ドームの試合でクリス・ジェリコ選手が見せた冬木弘道さんのマッチョポーズも、昔を知るプロレスファンは敏感に反応していた。


そして今回のストレッチプラム。
私が札幌決戦前に読んだブログによると、タイチは川田利明の代表的な技の中で唯一このストレッチプラムだけはまだ解禁していなかったとのことだった。それをタイチはこの大一番に持ってきた。ブーイングを一身に受けるヒールとして、自分の生き様をはっきり指し示しながら、それでもレスラーとしての彼の意地、メッセージがこの技に込められているように感じた。ここでまたどうにも込み上げるものが抑えきれなかった。いやお前好きになってまだ一週間やろ何見てきたように語っとるんやとか言わないでくれ頼む。



もちろん、この札幌での戦いは鈴木軍だけじゃない、ロスインゴベルナブレスデハポン、とりわけ内藤選手にとっても自分の生き方を明確に描いてみせた日だったんじゃないかと思う。
内藤選手はプロレスラーとしていつでも”お客様”のために、そう思ってリングに立ってきた人だと認識している。これは何があってもお客様を楽しませるために試合に立つ、そんなプロレスラーとしての彼の信念が浮き彫りになった試合でもあった。
きっとロスインゴのファンの方は内藤選手の生き様に胸震わせただろう。ボロボロになりながらも懸命に戦う内藤選手の姿に涙も溢れただろう。ハマりたての私が鈴木軍のヒールぶりに思わず涙した、その対角線上ではまた別のドラマが誰かの頬を濡らしていたのだ。


そう、いつも有プロが言っていた。プロレスとは人生。そして番組での有田さんの語り口からも分かるように、一つの試合に対しても見方は一つだけではなく、それぞれのサイドからのストーリーがそこにはある。
2.3雪の札幌で、私はそんな人生を、レスラーたち一人一人のドラマを、起きた出来事それ自体よりもそれによって垣間見えた彼らの生き様から感じることができた。そして好きになった以上は改めて、咽び泣きながらもこう言うしかないと悟ったのだ。「いやあプロレスって、面白いな!」と。



そんなニワカの感想でした。
偉そうなこと言ってほんとすみません!!!




(私の愛したヒールたちへ)
Mr. Bad Guy – Freddie Mercury
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“It's the only way to be
That's my destiny”